Q.こんにちは。さっそく、質問ですが・・・。たくさんの昆虫を観察していると、カメムシ、バッタ、ナナフシ、ハエ、チョウなどの、足の先に丸い吸ばんのようなものが、ついているのに気づきました。ぎ問に思って、本やネットで調べてみたところ、ハエやチョウなどは、そこで味を感じることができるのがわかりました。しかし、ほかの昆虫の吸ばんは、何のためにあるのかわかりません。先生、その吸ばんの名しょうや役割などを、教えてください。どうぞよろしく、お願いします。 筑波大学菅平高原実験センターの町田龍一郎です。昆虫類の進化を研究しています。興味深い質問、有難うございます。私もあなたのように子供の頃から虫が好きでした。虫の季節となり、私は毎晩、我が家の門灯にたくさん来る昆虫たちを見ているときがとても楽しいです。その昆虫はそれぞれ、美しく、奇抜な形や色をしていて、また、「なんて上手くできているんだ!」といつも感動しています。 あなたはたくさんの昆虫を観察して肢(昆虫の足にはこの字を使うことが多いです)には吸盤のようなものを見つけたのですね、よく観察しています! そこであなたの質問ですけど、まず、名前について話しましょう。研究者の間で名前の付け方が定まっていなかったり、色々議論がありますので、一つの考え方として聞いてください。 まず、昆虫の肢はいくつかの節からなっています。基部から、基節(さらに基部には亜基節というのがありますが、これは板状になって、昆虫の体の側方を被う「側板」という構造になっています)、転節、腿節 (タイセツ)、脛節( ケイセツ)、跗節 (フセツ・しばしば、さらにいくつかの節に分かれる)、そしてその先に爪があります。そして多くの昆虫類で、跗節の腹面には、あなたのいう、「丸い吸盤のようなもの」があります。これは対であったり、左右が融合して一つになる場合もあります。この「丸い吸盤のようなもの」は肉盤(胞盤、褥盤 ジョクバン)と呼ばれます。特に肢の先端、爪の間にあるものを爪間盤 ソウカンバン といいます。 では、この肉盤、爪間盤の役割は何でしょうか。私は毎晩、門灯に来る昆虫たちを「すごいな!」と見ています。彼らは壁とか門灯のガラスなども平気で歩けるのです。凸凹のあるところは爪を引っ掛けて歩けるでしょうが、ツルツルのところも彼らは歩けるのです。これはこの肉盤、爪間盤のお蔭です。ではどのようになっているのでしょうか? 2002年に発見された最も新しい昆虫の目(モク)で、南部アフリカに生息しているカカトアルキ目を例にしてみてみましょう。驚くことに、肉盤、爪間盤を走査型電子顕微鏡で調べてみると、小さな毛が無数に生えているのがわかります。このような細かな毛が密生していると、毛が互いにくっついて小さな吸盤のようになるのです。そして、さらに、毛が粘り気のある「粘毛」である場合もあり、こうなると効果抜群です(カカトアルキ目は粘毛です)。結局、「丸い吸盤のようなもの」はどこでも歩けるようにする、素晴らしい構造だったのです。 私はいま、家で沖縄から採ってきたハラビロカマキリの幼虫を飼っています。スーパーなどでトマトを入れて売っている、透明のプラスチック容器で彼らは幸せそうに生きていますが、その容器の壁面、天井、どこでも平気に歩けます。そこにとまって、餌がやってくるのを待ったりもしています。そして、脱皮のときは、まず、天井にへばりつき、次に背中が裂けて、新しいからだがその裂け目からぶら下がり、やがて脱皮が完了する・・・。このようなことができるのはこの肉盤、爪間盤があればこそです。 ハエやチョウは肢、とくにとまるときにものに着く場所、つまり、肉盤や爪間盤に臭いや味を知覚するための感覚毛が一緒に生えているのです(感覚毛については、「BSリーグ通信第8号」の「先生、質問!」に簡単に触れていますので、ご覧下さい)。こうなると、さらに好都合ですね! チョウやガのメスが卵を産むとき、幼虫の餌となる植物のところに行かねばなりません。まず、触角でそれらしい植物の臭いを嗅いで、そこに行きます。そして、その植物の周りを飛びながら、ときどき、肢で葉に触ります。そして、さらに「この植物だ!」と分るのです。なんて上手くできているのでしょう。ハエが私たちの食卓に来て嫌がられますが、そのときも食器の上を歩いて「味」を感じているのですね。 お分かりになりましたか? いい質問、有難うございます。また、お待ちしています。一緒に昆虫の素晴らしさにワクワクしていきましょう! |
Q.昆虫の翅について、疑問に思いました。鳥は、手が進化して翼になったと聞きます。では昆虫は?と疑問に思い私は、昆虫も始めは蜘蛛のように4本足があって、一番頭に近い足が翅に進化したのではないかと考えながら調べていました。 ネットで調べて、昆虫は、手(足)ではなく皮膚が進化して翅が生えたという説が出てきました。しかし、なんとなく「きっかけ」がなければ羽のようなものにならない気がして・・・進化の過程の絵などがあれば、詳しく教えて頂きたいと思います。 A.筑波大学菅平高原実験センターの町田龍一郎といいます。私の専門は昆虫比較発生学という分野で、昆虫の体ができてくる過程を比較して、昆虫類の体制や進化を考えています。ですから、昆虫類の最も大きな特徴である「翅(ハネ)」についても色々と研究をし、考察しています。 仰るとおり、鳥やコウモリの翼は、私たちの手、というより、「前脚」に由来しています。これはたいへん分りやすいですね。両生類、爬虫類、哺乳類、そして鳥類は四足動物といいますが、その祖先は魚類です。トビウオも飛びますが、これも私たちの前脚と相同の胸鰭(ムナビレ)で飛ぶのです。ですから、四足動物に魚類を加えた脊椎動物の系列において飛ぶ場合は、「前脚」を使うのです。 では、昆虫類の翅はどうか、どこから来たのか?これは、非常に難しいテーマで、ネーチャーとかサイエンスという有名な科学雑誌でも、「昆虫の翅の起源」に関する論文が最近でもいっぱい出ています。 昆虫の翅の起源には、大きく分けて二つの説があります。一つは「側背板起源説」、もう一つは「鰓(エラ)起源説」です。 まず、「側背板起源説」をみてみましょう。昆虫類の体は外骨格で覆われていて、背中を覆っている板を「背板」といいます。「側背板」とは、その「背板」の両側の部分をいいます。図1は「側背板起源説」を示した絵です。胸部の側背板がだんだんと伸びてくる、そして、進化の過程で十分な大きさになったとき、それによって飛べるようになった、そのような考え方です。たいへん分りやすいですね。あなたがネットでご覧になったのはこの説です。 でも、どうですか、すこし変なところはありませんか? いま、「進化の過程でだんだんと大きくなって、十分な大きさに達したとき」と書きました。これが問題です。翅が十分な大きさになったとき、それは「飛翔器」として初めて意味があるのであって、それ以前の中途半端なものは飛翔の役に立たない、そのような「適応的でないもの」は発展するはずがないのです!いや、それどころか、発展途上の「翅」は、例えば、ジャングルなどを歩いているとき、それがどこかに引っかかってしまう、その昆虫は身動きが不自由になるばかりか、捕食者に襲われてしまうかもしれない、そのような「役に立たないものや生存に不利なもの」は進化するわけがありません。ですから、「側背板起源説」は受け入れることはできないのです。新しい構造が進化してくるとき、発展途上の段階であっても、「適応的(生存に有利)」でなければならない、進化を考えるときは常に、「それが適応的であるか」を考慮しなければならないのです。あなたが『しかし、なんとなく「きっかけ」がなければ羽のようなものにならない気がして・・・』と思った、まさにそこです! よく気付きましたね! では、もう一つの「鰓起源説」をみてみましょう。まだまだ分らないことがいっぱいありますが、現在はこの考え方が最も信頼できるもののようです。では、どのような考え方か、説明しましょう。 翅をもつ昆虫類(有翅昆虫類)の祖先に最も近いのはカゲロウ目です(図2)。鍵はこのカゲロウ類にあります。カゲロウ類の幼虫は水生で、水中で呼吸するために、各体節の両側には葉状の鰓があります。その鰓は基部に筋肉があり動かすことができます。鰓を動かすことで新鮮な水から酸素をいっぱい取れるのです。そして、活発な運動をするためには、多くの酸素が取れるように鰓が大型になったほうがいいのです。また、筋肉も立派になってさらに鰓を強く動かすものが現れてきたでしょう。そうなるとどうなりますか? 鰓は水を掻いて、カゲロウの幼虫は水中を泳げるようになったのです。ペンギンが翼で水中を泳ぎまわるように。このとき、胸部の鰓は特に大きくなっていたようです。化石から分ります(図2)。きっと、前方の鰓が大きくなったほうが泳ぐのに都合が良かったのでしょうね。 このように、カゲロウの幼虫は大きくなった鰓で水中を羽ばたき遊泳していたのです。そして羽化、陸上に上がります。そうなると鰓は不要になる、だから腹部の鰓は捨てたのです。でも、「遊泳」を楽しんでいた胸部の鰓を捨てたでしょうか? きっと、それは陸に上がっても跳躍を助けるくらいの役には十分に立ったはずです。ですから「発展途上の翅」は十分に適応的ですから、さらに淘汰されることもなく発展していくのです。そして彼らはついに大空を手に入れるのです。 > これが翅の「鰓起源説」です。図3は今述べたことを絵にしたものです。先ほどの「側背板説」と比べてどうでしょうか。ずっと説得力があると思いませんか:翅を獲得するまでのすべての過程が「適応的」に説明できているのです。そして、「鰓起源説」を支持する分りやすい証拠もあります。それは、昆虫類の鰓は、中に気管が走っていて、これを通してガス交換を行う、「気管鰓(キカンサイ)」というものです(図4)。 そして、昆虫の翅には翅脈という筋が走っていますが、この翅脈は解剖学的に、そして発生学的にも、気管であるということが分っているのです(図4)。私も比較発生学そして分子生物学の立場から翅の起源について研究しますが、やはり「鰓起源説」が正しいようです。 【図表引用元】 図2最右;図4:The Insects of Australia. 2nd Edition, Vol. 1. Melbourne University Press (1991) 図2中央:Electronic Field Guide to Aquatic Macroinvertebrates of Small Streams in Eastern Massachusetts |
Q. 蜘蛛の目は、なぜ8個もあるのですか? 8個も目があるのには、理由が、あるのですか。 実際に見ようと、近づいたこともありますが、小さすぎて見えませんでした。 A. 筑波大学の町田と申します。昆虫類を研究しています。あなたはクモや虫が好きなのですね。そこで、このような難しい質問を下さったのだと思います。この質問、お答えするのが大変難しいです・・・。 例えば、人などの目は高性能で、ちゃんとシッカリした像が網膜に写りそれを知覚する、カメラ眼といいます。 昆虫などを含む節足動物(クモ、サソリ、ヤスデ、ムカデなども含む)はこのような高機能な目を発達させることはなかったようです。何らかの制約でできなかったのかもしれませんね。 しかし、彼らは大してものを見れないものばかりかというと、そうではありません。小さなレンズを持つ個眼がたくさん集まった複眼を獲得したのです。素晴らしい複眼を持った昆虫類の仲間はかなり鮮明な像をみているということは分っています。カメラ眼ではないこのような目で、少しでも良くみようとして、複眼という戦略をとったのでしょう。 複眼は節足動物(大顎類+鋏角類)の特徴です。節足動物の中で進んだ生物である大顎類(エビやカニの甲殻類+ヤスデやムカデの多足類+昆虫類)は全て複眼を持っています。鋏角類(剣尾類+蛛形類)の中の進んだグループである蛛形類(サソリ・クモ・ダニ・ザトウムシなど)は、小さな個眼がせいぜい数個あるくらいです。でも、より原始的な剣尾類(カブトガニや化石に出るウミサソリなど)は立派な複眼を持っています。 すなわち鋏角類も本来、複眼を持っていたのだけれども、何らかの理由で数個の個眼のみを持つようになったのでしょう。 クモなどの蛛形類がどうしてそうなったかは分りませんが、そのような数個の個眼のみからなる目を持つように、進化の過程で変わってきたのでしょう、きっと複眼のように発達した目は必要でなかったのでしょう。 蛛形類の中のサソリなどは頭胸部に1対の個眼しかもちません。恐らく明暗、あるいはエサが動くぐらいしか感知できないでしょうが、その代わり、いっぱいの感覚毛を持っています。暗闇で活動するならこれでいいのでしょう、むしろこのほうが良かったのかもしれません。 クモも網にかかるエサを食べるなら、そんなにいい目はいらない、これもエサがかかったのを感知する感覚毛の方が役に立つのかもしれません。そうなれば夜でもエサが取れるのですから。 クモは普通8個の目を持っています。これはきっと、モノが動くときに「まず、この目に映って、次にこれで・・・、最後にここの目に映った」、これではっきりモノが見えなくてもものの動きは分りますよね、このようなわけで、立派な目を持たずとも、モノの動きとか明暗などは感知でき、普通のクモの生活にはこれで十分なのでしょうね。 しかし、昼間活動して徘徊してエサをする徘徊性クモの場合は事情が少し違います。特に、昼もよく活動するハエトリグモ科などはそうです。彼らはどうしたか・・・、前の二つの目を巨大にして、モノをみれるようにしています。結構ちゃんとした像を見ているようです。 宜しいでしょうか?、質問にお答えできましたでしょうか?、今度虫眼鏡か顕微鏡でクモの目を是非見てください。つぶらな目は可愛いですよ^^。 【参考サイト】 ■昆虫・クモの頭部ばかり集めた写真集です。ハエトリクモなど、単眼がはっきり見える写真がたくさんあります。トンボなどの複眼と単眼もはっきりわかる、いい写真が多いです。 http://www.flickr.com/photos/7539598@N04/sets/72157600033217670/ ■日本蜘蛛学会 公式ホームページ内の一ページです。『クモの巣と網の不思議』 執筆 池田博明という本が絶版になっているため、本書の内容をWEBに掲載したものです。 http://www.asahi-net.or.jp/~hi2h-ikd/asjapan/spiderwebikeda.htm これはオオジョロウグモの標本の目の部分を拡大した もの。真中に4つ、右側に2つ、左側に2つで合計8個の 目があります。 撮影 八畑 謙介先生 コアシダカグモ(標本) コアシダカグモの眼の拡大。 確かに8個ですね 八畑先生も虫博士!クモについて質問しました。 ■上の写真の標本はどこで採ったものですか? コアシダカグモは筑波山で採集したものです。オオジョロウグモは石垣島で採集しました。関東にはいません。 ■大きさは? コアシダカグモはオスもメスも体長20mm程度です。オオジョロウグモのメスは胴体部分だけで5cm程度、足の長さを合わせると20cm以上にもなる日本で一番大きなクモです。オスはメスの10分の1ほどの大きさしかありません。 ■クモはみんな巣を作るのですか? 全てのクモがいわゆるクモの巣状の巣を作るわけではありません。たとえば、ジグモの仲間は土の中に穴を掘って細長い袋状の巣を作り、巣の表面を通る虫を中で待ち構えているのです。穴の入り口にふたのある巣を地中に作るクモもいますよ。 ■クモはどのように交尾するのですか? クモは頭の前の部分に脚のように見える触肢を持ちます。オスのクモは触肢の先端が膨らんでいます。腹部から精子の塊を取り出したら、この触肢で持ちます。そして雌に近づいて、雌の腹部にある生殖器に入れるのです。 関東で家の軒などに普通に見られるイエオニグモは、オスが脚先でメスの脚や背中のあたりを素早くたたく行動を数回繰り返すと、メスがころっとひっくりかえるんです。するとオスがさっと腹部に触肢を伸ばして、交尾します。早業ですよ。 ■毒をもったクモもいますよね? 人間には害がない毒の場合が多いですけど、ほとんどのクモは毒を持っています。クモは生きている虫を食べるので、虫を動かなくさせるために、毒を持っているのです。 人間に対しても害のあるクモもいます。オーストラリアにはシドニージョウゴグモという毒グもがいます。致死率も高かったのですが、現在は抗毒血清ができているので、咬まれても死に至るということはなくなっているようです。 日本にも人間に対して毒のあるクモは数種類いますが、咬まれて問題になる事故の例は多くないようです。しかし近年、毒性の非常に強いセアカコケグモという毒グモが海外から移入して繁殖している地域もあり、とても問題になっています。 ただ、ほとんどのクモは人間にとって無害です。蚊やコバエなど小さな虫を食べてくれる「いいムシ」なんですよ。ゴキブリを食べてくれるクモだっているんです。家の中にクモがいたからと言って、殺さないであげてください(笑)。家の外に放してあげましょう。 |
Q.「カブトムシやクワガタは、夜に活動する虫ですよね?なのに何故、光に集まってくるのでしょうか?光が好きならば、昼間に活動すればいいのに。 A. はじめまして、BSリーグへようこそ!! BSリーグを担当させていただいている町田です。子供の頃から昆虫が好きで、結局大人になっても昆虫と一緒に過ごしています。早速に、たいへん難しい質問が・・・・。 私がよくサンプリング(虫採り)に行くところにカブトムシなどがたくさん集まるコナラの樹があります。夜もいますけど、昼にもたくさんのカブトムシ、クワガタ、コガネムシなどが餌を食べて活発に活動、交尾もしています。 カブトムシやクワガタは昼間も活動しています。でも夜の灯火にたくさん集まり光が好きなように感じます。他に夜活動する昆虫ということで最初に思いつくのにガがありますね。彼らも同じように灯火に集まって「夜に活動する虫」で、昼間はほとんど休んで寝ているようです(逆に夜は休んで昼活動するのはチョウです。チョウとガは同じ鱗翅目というグループに入り、夜に活動するのがガで昼に活動するのがチョウなのです)。 こう見てくると、「灯火に集まる→光がすき→明るい時に活動すればいいのに」となります。私もそのように感じるし、さらにもう一つの疑問がわいてきます。灯火に集まるというけど、虫たちはきっと「灯火に集まる」という習性を人間が「灯火」を発明する以前から持っていたはずだ・・・、どうして? このことについて、誰か調べている人がいるかもしれませんが、私なりに以前から考えてきたことを書きましょう。「Q」の直接の答えになってはいないかもしれませんが、あとは皆さん考えてください。 昆虫行動学者や昆虫生理学者がガの「走光性(光に集まる性質)」について研究しました。その結果、光にまっすぐに飛んで来るのでなく、光線に対してある角度をとって飛ぶことにより段々と光に近づいて来るということが分ってきました。(図1)。 そうですね、灯火に集まるガを見ているとまっすぐは来ないでクルクル回ってやってきますね。つまり、光線があると、ガはこのような飛び方をするようにできてしまっているのです。 では、さっきの私が疑問に思ってきたこと、「彼らは灯火がなかった時代に何をやっていたんだ?」 人が灯火を発明する以前の明るい光源は「月」です。それなら、「彼らは、灯火に集まるように、どんどん月に飛び進んでいたのか?」と考えたくなります。でもそうはならいのです。灯火は放射状の光線を出します。月も同様ですが、月と地球はたいへん離れていますから、地球上では月の光はほとんど平行光線です。「平行光線が存在していること」とガなどのもつ「光にある角度をとって飛ぶという習性」を組み合わせるとどうなるでしょうか。 図2を見てください。 ガは光線にある角度をとってとび続けるのです。光線は平行であって放射状ではないので、光源である月に向かうことなく地上をブンブンと飛び続けることになるのです。つまり、ガなどのある昆虫は月の発する明るい平行光線のもと、ブンブン飛び回るのです。そのようにプログラムされているのです。これはどんな意味があるのでしょうか。まず、飛び回ることにより新たな土地に到達し分布を広げる役に立ちます。 また、飛び回ることにより異性に巡り会える、繁殖の機会が増大します。さらに、昆虫は異性を見つけたり呼ぶためにフェロモンという物質を体から発散しますが、この月夜の晩にフェロモンを含んだ風が吹いていたら・・・、ブンブン飛んでいる昆虫はこの「フェロモンの流れ」にぶち当たる可能性が増えるのです、そうなったら彼らはこの流れをさかのぼるでしょう!、めでたく異性に巡り会えもするのです(図3)。 いかがですか? 「昆虫は光が好き」と私たちは感じる場面がありますが、よく考えると少し違った側面があるのです。皆さんも色々と考えてみてください。 |
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第22号 2011.09.01
第21号 2010.11.10
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第16号 2010.03.02
第15号 2010.02.03
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第10号 2009.07.30
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第08号 2009.05.29
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