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めざそう未来の科学者!SSリーグ 筑波大学 次世代科学者育成プログラム 

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科学者への道

第一回 佐藤忍先生

筑波大学生命環境科学系佐藤忍先生

専門分野:植物生理学
研究内容「高等植物の根や細胞壁の働きの解明」
 ■どんな子どもだったんですか?
僕は、横浜で生まれ育っています。一人っ子だったこともあり、一人で何かをやっているのが好きだった。僕のバイブルは学研の「科学」と「昆虫図鑑」で、それをずーっと眺めているような子どもだったなあ。

小さい頃は虫を飼うのが大好きだったんだけど、周りに飼い方の相談をする人がいなくて、途中で死なせてしまうことが多かった。

■印象的な出来事
小学校4年生の時、僕が虫キチだということを知った友達のお父さんが、カイコの卵をくれたんだよね。横浜だから近くに桑の木がなかなかなくって、探し回ったなあ。
ようやく見つけた桑の木から、葉っぱをとってきて、一生懸命育てた。今でも覚えているんだけど、ある朝起きたら、繭からかえったカイコガが、交尾して卵を産んでたんだよね。初めて卵から幼虫、成虫にして卵を産ませるというライフサイクルを回せたことが、すごく嬉しかった。

カイコについて参考サイト:
JST生物まるごと資料館 動物の部屋


■ご両親のかかわり方
父は生き物が好きな人だった。盆栽とかやってたからね。母は多分、虫は好きじゃなかった。でも家の中でカマキリの卵が孵化してしまっても、我慢してたなあ。嫌だったと思うけど(笑)。

■中学時代は?
中学時代の担任の先生が生物の先生だった。ほかのみんなには嫌われていた先生なんだけど、僕は大好きで、一緒に植物採集をかねた山歩きによく行った。山で根ごと植物を取ってきて、それを植木鉢に植えて育てようとした。枯れちゃうことがほとんどだったけど。これで植物が好きになった。

■どうして生物学の世界に?
友達の多くは「生物はつまらない!」と言ってたんだよね。でも、僕は「生物は面白い!教え方がよくないんだ!」と思っていた。だから生物の教師になろうと思い、大学は理学部に進んだ。学部生の間はまだ教師になろうと思っていたんだけど、大学院に行ったときに研究の面白さに目覚めた。

■何が面白かったんですか?
自分で考えて、それを試して、結果を検討してまた考えてという繰り返しが面白かった。 

■今まで学生を見てきて、いい科学者になるのに必要な能力はなんでしょう?
わからないことを一生懸命自分で考えているかどうかがポイントかなあ。本当に真剣に考えているかどうかだね。

■科学者を育てる上でのポイントは? 
自分でやるのを見守ることかな。

■生物の科学者になるために、子ども時代にしたほうがいいことってなんでしょう?
生き物を飼うこと!生き物を飼うことというのは、生物を学ぶ基本だと思う。


■おすすめの本は?
ファーブル昆虫記です。1991年に奥本大三郎によって書かれた全8巻が集英社が出たので子どもに買って、自分も読み直しました。
このシリーズ(第一巻はファーブル昆虫記〈1〉 ふしぎなスカラベ)が親しみやすくておすすめです。 この本は、単なる昆虫記ではなく、様々な実験を試みた記録、つまり昆虫実験記です。身近な昆虫に手近な道具を使っていろいろ試してみる、まさにBSリーグにぴったりです。


■現在、先生が研究なさっていることを教えてください。
 我々の研究は、植物がどの様に日々暮らしているのかを、植物の身になって考えるものです。その中から人間に役立つ技術が生まれてくることを願っています。 大きく分けて二つの研究をしています。


■一つ目の研究は?
植物の根についてです。植物の根は、ただ単に水や栄養を土から取り込んでいるわけではなく、「導管液」というものを作っているんだよ。

ホットケーキなどにかけるメープルシロップは、カエデの導管液なんだ。メープルシロップって、高いでしょ?何故かというと、一年のうち、芽ばえの前の1、2か月の間しか採れないからなんだ。
葉っぱがあれば、植物は葉っぱで光合成して、エネルギーを得ることができるけど、芽ばえの前は葉っぱがないよね。葉っぱを作るにはエネルギーが必要。そこで、どうするかというと、根で「導管液」を作り、導管(道管)を通じて、上まで送っているんだ。芽ばえのためには、大量の導管液が必要で、その一部をシロップとして人間が利用しているんだね。北海道のお土産となっている「白樺の樹液」も導管液だよ。

導管液には、栄養となる無機塩類に加え、ホルモンやタンパク質や糖質などが含まれているんだよ。

植物の体内でも細胞と細胞、組織と組織、器官と器官の間のコミュニケーションが行われています。そうじゃないと、花を咲かせたり、種を作ったりできないからね。植物には神経や血管などがないのに、どうやって個体として調和のとれた生活をしているのか?そのカギを握っているのが私たちが研究している導管液です。

■もう一つの研究は?

細胞接着に関する研究です。キュウリやスイカなどはカボチャに接ぎ木されて栽培されています。どうしてかというと、キュウリやスイカなどを、毎年同じ土地で育てようとすると、連作障害がおこり、生育が悪くなります。カボチャは連作障害に強い作物です。なので、カボチャを台木にして、キュウリやスイカを接ぎ木すると、毎年作り続けることができるんだ。

病気になりにくい植物を台木にすれば、農薬の使用を減らすこともできるので、環境にやさしい技術でもある。接ぎ木がうまく行くのは、カボチャとキュウリの傷害を受けた茎の部分で細胞分裂が誘起され、細胞同士が接着し、維管束などの組織が分化・再生して機能的にも連結したからです。植物の様々な発生現象や受精などの生理現象に細胞接着は大変重要な働きをしています。

細胞同士の接着には、ペクチンという細胞壁多糖が接着剤として働いているんだけど、ペクチンがどの様な遺伝子の働きで合成され、細胞接着がどのように制御されているのかは、未だによく分かっていません。この細胞接着や組織の癒合(ゆごう)のメカニズムを解明することが、二つ目の研究です。

 
筑波大学生物学類 佐藤忍研究室のサイト

科学者への道

科学者は子供のころどんな子供だったの?なにがきっかけで科学者になったの?科学者になるまでの道のりを先生たちに聞いてみましょう!
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